ジダン、怒りの鉄拳

by 牛尾 千聖

引っ越してから、理由は割愛しますが、週に一度おばさんが家に来る。

そのおばさん(Kちゃん)は、大の阪神ファンだ。Kちゃんの日課は、道上洋三のラジオを聞くこと。そのラジオでよく「阪神クイズ」なるものがあるらしく、クイズに正解したらその中から抽選で賞金がもらえるとのこと。そのクイズというのが、勝敗を当てるなど阪神の試合にまつわるものである。Kちゃんはもう普通に阪神の試合を見ることができなくなっているらしく、クイズの楽しみも入れて試合を見ている。今回のクイズは「82日から25日までで、エラーがなかった試合数を当てる」というものだった。試合数は21試合。なんだか、エラーをする日でなくて、エラーをしない日を当てる、ということに阪神ファンの悲哀が感じられた。

私もそのクイズに参加することになったのだが、私は野球の試合をほとんど見ない。よくわからないからなんとなく15と答えた。Kちゃん曰く、今の阪神はものすごくエラーをするらしい。Kちゃんは悩んだ末、13にした。当選者はエラー数×1万円がもらえるという、すごいクイズ。当選したらおいしいもの食べようとワクワク話していた。Kちゃんが私の分もラジオにハガキを出してくれた。

Kちゃんは阪神クイズの詳細を書いたメモした紙を私にくれて、その日は帰った。

その後、ジダン(愛犬)が遊んで欲しそうだったが、放って家事をなんやかんやとしていた。

ジダンは吠えない。怒っても吠えないのはいいのだけど、イライラすると彼なりの表現で伝えてくる。ジダンの届く範囲にあるティッシュがあれば、一枚くらいを噛みちぎってボロボロにした状態にする。そして知らんぷりしている。私はこれを「怒りの鉄拳」と呼んでいる。

家事を終えてジダンのところに行くと、そこに怒りの鉄拳があった。今回はティッシュではなくKちゃんが書いてくれた阪神クイズの詳細にメモがボロボロにされていた。

そして一ヶ月後、クイズの正解が発表された。12だった。

ジダンとちゃんと遊ぶことにする。